2020 July

 

   
 
 
本の資料のため子供の頃の絵や工作を時系列で並べる作業が続く。大好きだった「ドリトル先生シリーズ」の映画を見て描いたカタツムリ。ドリトル先生は20世紀前半にアメリカで活躍したイギリス作家ヒュー・ロフティングによる児童文学シリーズ、日本に登場したのは1925年という遥か昔と知り驚く。井伏鱒二が近所に住む児童文学作家の石井桃子の勧めで翻訳を始め、陸軍に徴用され中断するも終戦後に再開、1962年に全巻の翻訳を完成、この井伏訳は今も岩波少年文庫として版を重ねていると知り更に驚く。

 

 

 
 
緊急事態宣言が解除になっても感染者は増え続けなかなか外出する気分にはなれず、本の整理を少しずつ始める。父の助手の方からクリスマスプレゼントに頂いた絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」、1965年の初版以来、福音館書店のロングセラーと知る。2匹のうさぎの優しい愛の物語が美しい墨絵のような濃淡で穏やかに語られ、木々のせせらぎや森の匂いまで感じられる絵の美しさと静かな事の運び、ピュアなラブストーリーは今読んでも心に響く。

 

 

   
 
 
コロナウィルス感染拡大防止と外出自粛・・・、展覧会を見に行く機会はめっきり減ってしまったけれどオンラインによるメディアアートのライブ配信など、今迄あまり馴染みのなかった新しいジャンルのWEBサイトを見るようになって世界が広がったよう。ライブが終わってからも見られるので「時間的自由」Time freedomも嬉しい。

 

 

 
 
アトリエの本棚には好きなアーティストの作品集や写真集などさまざまな本が並んでいるけれど、重くて分厚い大型本はめったに開くことはない。アンディー・ウォーホールの 「FASHON」はさりげないイラストにウォーホールのエスプリがたっぷり詰まった素敵なイラスト集。母から誕生日プレゼントに贈られた小さな宝石のような本、ページを捲りつつおしゃれが大好きだった母を想う。

 

 

   
 
 
仰々しいモノや恭しいものが苦手な私が最も敬愛しているアーティスト、マルセル・デュシャンのDVD。数年前、ポンピドーセンターのブックショップでオーダーしてまで手に入れた貴重品。クーラーの効いた涼しいアトリエでハーブティーをお供に静かに映像を見るシュールな午後。

 

 

 
 
陶芸の中でも濃い色合いや風合いのあり過ぎる質感が苦手な私は、淡い色の釉薬が美しくなめらかな質感の萩焼が大好き。友人と言うにはおこがましい敬愛する萩焼の作家、新庄貞嗣氏の個展のご案内を頂く。2年に一度の機会を楽しみにしていたけれど今年は新型コロナウィルスの感染拡大防止のための外出自粛要請で伺えずに残念。毎回お送り頂くカタログは素敵なアーカイブになりアトリエの本棚に並ぶ。

 

 

 
 
 
現代アートを見る機会は多くあるけれどロシア人のアーティスト・ユニット、イリヤ・カバコフは私にとって少し特別な存在。ヴェネチアの宝石のような美術館、クエリーニ・スタンパリア財団のミュージアムショップにジュエリーのコーナーを持っていた2003年、同時期に展覧会の搬入をしていたカバコフ夫妻。世界的なアーティストの行動を真近で見る貴重な体験であり、その個性的な佇まいに息を呑んだ。その稀有な体験が巡り巡って友人との縁を運んでくれた森美術館のカタログ、誰もいない静かな朝のアトリエで真っ白な表紙を開く。母の覚書きのようなメモを見つけ全てがリンクしていく不思議な時間。

 

 

 
 
 
3ヶ月ぶりに訪れる軽井沢の我が家、ギャラリーのディスプレイも懐かしく現代アートのインスタレーションのようにさりげなくレイアウトされている父の研究室出身者の方々の著作をゆっくり見る。皆さん本当に活躍されていて拝見する度に刺激を受ける。子供の頃お世話になった父の助手であったM氏の作品集を発見し嬉しく、長いお付き合いに想いを馳せる。

 

 

 
   
 
 
 
今年は新型コロナウィルスの影響でGWも軽井沢には来られず一年ぶりに伺う友人の美術館。美しいお庭に迎えられようやくシーズンが始まった実感、久しぶりの再会は殊の外嬉しくテラスでお茶をご一緒する。文化学院の卒業生の作品が分野ごとに並ぶ展覧会、中でも創始者である西村伊作氏の陶芸作品はその自由な表現と独特な作風に氏のスピリッツが溢れていて興味深い。夢のようなお庭を眺めつつお喋りは尽きない。

 

 

 
 
 
expo index 軽井沢書店にガラス作家の河上恭一郎先生の個展に伺う。避暑地らしいブックカフェをの中に「一坪の個展」と言うコンセプトも新鮮、美しい器やオブジェ、亡き奥様を偲ばれて「MAYUKO」とネーミングされたガラスのアクセサリーが並ぶ。私が生まれる前から続く家族ぐるみのお付き合い、大切な日はいつも河上先生の作品でテーブルを囲んだ懐かしい思い出が蘇る。 page top

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